マンハッタンやニューヨーク市に住む学生にとっては米国内で自動車を運転しなければならない機会は余りないと思われますが、就学年齢の子供を含む家族で留学する場合、一般的には、日本人の駐在員が多数住むウェストチェスター郡(Westchester County。マンハッタンの北方で、電車又は車で30〜50分の範囲内に日本人が居住する)等に住居を構えた場合には、たとえ駅から至近距離に居住したとしても、買い物や子供の学校・幼稚園の送り迎え等で自動車を運転しなければ生活に支障を来す場面は多いので、自動車の運転する場合の資格関連について確認すべき必要があります。
そこで、以下では、私の経験に基づき、NY州で自動車を運転する場合の資格関連事項について述べます。当然のことながら、私はNY州法や連邦法の専門家ではないので、内容の正確性を担保するものではありませんし、私の以下の記述は、F-1ビザの地位に基づく場合の体験談なので、他種のビザの地位に基づく場合の自動車運転資格とは関連性がないかも知れません。本記事の内容に依拠して判断した結果について、筆者は一切の責任を負うものではありません。あくまでも、最終的にはご自身のご判断で自動車を運転していただきますようお願いします。
と、やや堅い決まり文句で始めましたが、私自身、この自動車運転資格関連事項は複雑で分かりにくく、とりわけNY州の留学生については情報が皆無に近く苦しめられたので、少しでも今後の方に参考情報を提供したく筆を執りました。
まず、結論的に言うと、F-1ビザの地位、即ち外国から留学生の立場でNY州に居住している学生は、「原則的には」、NY州の自動車運転免許をわざわざ取得しなくても、日本の自動車運転免許で、(NY州内に止まらず)米国内で自動車を運転することが可能のようです。
根拠は、NY州の陸運局(Department of Motor Vehicle)のWebsite(
http://www.nydmv.state.ny.us/license.htm#driversfromothernations)に2009年11月13日時点で存在した下記の記事です。
A valid driver license from another country is also valid in NYS. You do not need to apply for a NYS driver license unless you become a resident of NYS.
そして、「resident of NYS」(ニューヨーク州住民)の定義として、次の記事が存在します。若干長くなりますが、正確を期すために全文を引用させていただきます。
Definition of a Resident. If you become a resident of NYS, you must exchange your driver license and vehicle registration from another state for a NYS driver license and vehicle registration within 30 days. If you have a driver license from another state, you must get a driver license from NYS within 30 days after you become a resident of NYS. If you have a vehicle registration from another state, you must get a vehicle registration from NYS within 30 days after you become a resident of NYS.
Section 250 (5) of the Vehicle and Traffic Law defines the term "resident." The law defines a resident as a person who lives in NYS with the intent to make NYS a "fixed and permanent" place to live. To live in a house, a home, an apartment, a room or other similar place in NYS for 90 days is considered "presumptive evidence" that you are a resident of NYS. A police officer can use this evidence as the reason to issue a traffic ticket if you drive in NYS without a driver license or vehicle registration issued by NYS.
A judge considers the law and the evidence of your intent and decides if you are a resident of NYS. For example, if you pay taxes or your children attend school in another state, a judge considers these facts to decide if your intent is to make NYS a "fixed and permanent" residence. The DMV will not decide if you are a resident of NYS, if you must get a NYS driver license, or if you must register your vehicle in NYS.
According to this law, students from other states or from other nations who attend school in NYS are normally not considered residents of NYS.
即ち、通常、NY州に住居を構えてから30日間を経過するとNY州の住民とみなされる為(駐在員の方はこのようにみなされると思われます)、30日以内にNY州の自動車運転免許を取得することが求められているようなのですが、外国からの留学生については、「原則として」、そもそもNY州の住民とみなされない為、NY州の自動車運転免許を取得することを要求されていないと解されます。
逆に、「According to NYS law, a resident of another country can get a NYS driver license. The DMV does not recommend this」とされ、取得しようと思えば取得できるものの、お勧めしない、とすら言われています。
さて、これまで「原則として」という限定を付けてきましたのは、上記記事にもあるように、就学年齢の子供が現地の公立校に通学している場合等には、留学生であってもNY州の住民と見なされる可能性があるからです。
従って、この点に不安を覚える方は、やはりNY州の自動車運転免許を取得した方が安心と言えるでしょう。さらに、NY州の自動車運転免許を取得した場合には、ソーシャルセキュリティーナンバーを有せず何かと不便な社会生活を強いられる留学生にとっては、NY州の自動車運転免許を取得できれば、どこでも通用する写真付きIDを手に入れたことになり、社会生活をする上での不便さも軽減されるという特典が付いてくるので、わざわざ時間と労力を費やす価値があると言えるかも知れません。なお、「社会生活の不便さ」について詳述するスペースはないのですが、米国の不法移民の人たちが自動車運転免許を取得したくて、試験を受けられるとDMVから言われただけでDMVの窓口で泣き崩れる人たち、2008年の大統領選の民主党予備選で、オバマとクリントンの間で、不法移民に自動車運転免許証を発行すべきか否かを巡って大きな議論になったことからも、自動車運転免許証が写真付きIDとして機能する効力には大きな価値があることは、容易にご想像いただけると思います。
さて、それでは具体的にどのような手続でNY州の自動車運転免許を取得できるか、という点については、不完全なブログ記事で恐縮ですが、多数の文献がありますので、そちらをご参照下さい。なかでも、駐在員にとって不可欠の「ニューヨーク便利帳」には詳しく記載されています。
ところで、最後に2点ほど付言したいと思います。
第1に、配偶者のビザの地位、即ちF-2の地位でもNY州の自動車運転免許を取得することが可能ですが、DMVはできるだけ発行したくない模様で、試験を受けられると認められる前に、DMVの窓口が「Immigration Officeに確認する」とかいろいろな理由を付けて試験を受けさせてくれない場合が多いようです。そのような場合の対処方法として聞いた話では、日本国のニューヨーク領事館から、真正なビザを得ている日本国民の長期米国滞在者である等のレターを発行してもらい(このレターの公式な名称は知りません。)、DMVに提出すると効果があるとのことです。
第2に、自動車運転に必要不可欠な損害保険の加入についてですが、仮に日本の自動車運転免許証と国際運転免許証に基づき米国内で自動車を運転する場合でも、損害保険に加入することは可能のようです。但し、夫婦のうちいずれかがNY州の自動車運転免許を取得していることを条件に付けられる場合があるようです(詳しくは保険代理店にお問い合わせ下さい。保険会社によっても取扱が異なる可能性があります。)。
なお、私も誤解しておりましたが、日本の自動車運転免許試験場等で発行してもらえる所謂「国際運転免許証」自体は、NY州では自動車運転免許証として扱われておらず、あくまでも日本語表記の日本の自動車運転免許証が自動車運転免許証として扱われます。ただし、国際運転免許証は、日本語を読めない米国人警察官に対して、日本の当局から真正に自動車運転免許証の発行を受けていることの公証を受けた英文翻訳文として機能する為、日本の自動車運転免許証に基づき米国内で自動車を運転する場合には、常に両者を併せて携帯することが最善と思われます。
International Driving Permit: An International Driving Permit is not a driver license. The permit only verifies that you hold a valid driver license in your home country. Your foreign driver license, not the International Driving Permit, allows you to drive in NYS. Contact the authorities in your home country to get an International Driving Permit. If you are not a resident of the US, you cannot apply for an International Driving Permit in the US.
You are not required to have an International Driving Permit to drive in NYS, but the permit has value. The permit verifies, in several languages, that you have a valid foreign driver license. A police officer who cannot read the language on your foreign driver license can read the permit.
Y.A.
Class of 2010