毎日の業務がファイナンスばかりの方に是非読んで欲しい、また、これからMBA留学される方に是非読んでいただきたい、現代マーケティングの中身が詰まった本、「クロスイッチ 電通式クロスメディアコミュニケーションの作り方」を紹介。といっても私は電通のまわしものでもなんでもありません。現代のマーケティングを理解するために、わかりやすく、頭にはいってきやすい、実例が豊富にあるという点でお薦めです。是非この本を読んでいただいて、MBA留学時に古典的メディアミックスを語っているマーケティングの教授がいたら「それは基本ではありますが、もう古いです」といって欲しいと思う。
本の中身ですが、重要な点として、メディアミックスからクロスメディアへの移行という点がある。メディアミックスは、マーケティングを勉強された方ならばご存知の、ターゲット消費者にいかに効率的に認知を広げるための効果的なメディアの組み合わせのことですが、それに対して、クロスメディアはターゲットの消費者をいかに効果的に動かすためのシナリオにそったメディアの組み合わせと定義されている。
クロスメディアを考える上で、重要なフレームワークのひとつとして電通が提唱している"AISAS"がある。これは"AIDMA" (Attention, Interest, Desire, Memory, Action)−1920年頃から活用されている購買のフレームワーク−を現代の購買行動にあわせてAttention, Interest, Search, Action, Shareと改良したもの。つまりAttention, Interestまでは一緒だが、ここから検索や情報収集(Search)を実行し、購買(Action)後にその経験を他人と共有(Share)する(=口コミ、SNS等)というのが現代の購買行動の基本フレームになっているというもの。特徴としては、AIDMAがその順番で購買行動が進む一方、AISASはその限りではない。例えばAttention,InterestからいきなりShareを行うこともあり、SearchからShareに飛ぶこともある。これは元々SearchやShareという購買行動は以前からあったものの、ネットの出現によってさらに機能が高まった行動としてクローズアップされたのではないかと思う。
そして、次の重要な考え方として、「コンタクトポイント」がある。これは他の代理店ではタッチポイント等で呼ばれているものだが、消費者との接点を考える上で5つのポイントがある。
1.商品そのもの
2.マス広告・販促グッズ(企業が能動的に作り出すもの)
3.企業サイトやイベント(消費者の能動的なかかわりがあるもの)
4.番組・記事・店頭での陳列(当該ブランドを販売している企業とは異なる企業の活動)
5.口コミやネットでの書き込み(消費者が他の消費者から受け取る情報)
とこれらのあらゆる消費者とのコンタクトポイントを洗い出して、前述の"AISAS"のフレームワークの中でいかに効果的なクロスメディアを設計することが重要ということを主張している。
詳しい事例等も記述されており、自分もクロスメディアの狙った導線にのっていることが良くわかるかと思います。今であればロッテのガム"Fit’s"がその一例としてあげられています。夜中によく流れていますが、CMで佐々木希や佐藤健といったタレントが、なんだかよくわからない踊りをしている。で、ダンスに気を引かれた人が検索してWebをみてみるとそのダンスのコンテストをやっている。ダンスはYoutubeに自分がやる同じダンスをアップロードして、一定期間内に一番閲覧数が一番多かった人が100万円をもらえるというもの。
(ロッテ Fit's Website) まさに、TV CMまたは交通広告→Web→プロモーションという導線に載っているわけです。
みなさんも気がつくと広告の導線に載っていることがあるかと思います。この本を読むとそれが良くわかるようになりますよ。
また、クロスメディアのフレームワークや戦略といったところは日本のほうがアメリカよりも進んでいるのではないかと個人的には思っています。これから留学される方、是非クラスでこの話を発表してみてください。目立つこと間違いなしです。