皆様,こんにちは。フルタイムMBAプログラム2年目に在籍中のA.T.です。
アプリカントの方々は出願準備を進めておられる季節かと思います。アプリケーション・パッケージの作成に際してはそれぞれの学校の個性を吟味されるでしょうから,今回は私が今学期に履修した科目のうち,スターンらしさを感じていただけるものを一つご紹介します。
コース名は"INVESTMENT STRATEGIES"といい,その内容は主に株式投資についてどのようにアプローチすべきかを説くものです。ただ,それだけでは他校でも類似の科目を設けているとご指摘を受けるでしょう。私がこのコースをスターンらしいものと考えるのは,主に以下の2点の理由に因ります。
1) 教授が現役の実務家である
このコースを指導するのは,昨年までメリル・リンチでチーフ・インヴェストメント・ストラテジストを務め,現在は自らの名を冠したRichard Bernstein Advisors LLCを運営するProfessor Bernsteinという人物です。彼はInstitutional Investor誌で長年にわたり高い評価を維持してきたほか,Fortune誌の"All-Star Analysts"に選ばれるなど,運用業界で一定のネーム・ヴァリューを持っています。開講期間にもEaton Vanceと同氏の運営する会社との連名によるミューチュアル・ファンド(投資信託)が運用開始されており,講じられる内容を現時点で実際にビジネスとして活用していることがこれ以上に明らかな例は珍しいのではないでしょうか。(念のため申しますが,教授は学生から尋ねられるまで上記ファンドのことは一切言及していませんし,質問への回答に際しても購入を促す意図がないことを慎重に断ったうえで淡々と説明していました。)ちなみに,Professor Bernstein本人もスターンからMBAを受けています。*
2) クラスの時間帯が夜間である
このコースは毎週水曜日の午後6時から9時に行われます。大学のクラスとしてはずいぶん遅い時間帯だと思われるかも知れません。しかし,これはスターンではごく一般的なことです。なぜなら,スターンには大規模なパートタイムMBAプログラムがあり,平日夜間にも多くのクラスが行われているからです。パートタイム・プログラムとは,会社勤めなどのためウィークデイの日中に学校に通うことが難しい場合にも,基本的に夜間や週末に開講されるクラスだけでMBAを取得するためのものであり,その学生の多くは都心のオフィスで日中を過ごし,その後に更なる学びのためNYUのキャンパスがあるグリニッチ・ヴィレッジを訪れるのです。現に,このコースの受講者は見るところ半数程度がそのパートタイム・プログラムの学生のようでした。これはクラス・ディスカッションに学生の側からも実務者の視点を持ち込むため,仮にテーマが他校でも当然に扱われるものである場合にも,結果的に議論の内容は極めてup to dateなものとなりがちで,それ以外の受講者にとってもtake awayが多くなることは申し上げるまでもないでしょう。
* 授業では語られませんでしたが,彼は2009年の3月に銀行株についてのwarningを発しています。この時期が銀行株を含めたマーケット全般のボトムだったことを思い起こせば,教授に疑義を呈したいわけではないものの,どんな人物の助言も常に適切な投資判断につながるわけではないという当然の考えに至るのも感慨深いところです。機関投資家での業務経験からも,こうした個別のアドヴァイスで裏目に出たものばかりを取り上げることは有益でも公平でもないと考えていますが,講義の内容がどのように生かされてきたのかを考える機会を得られるのも,こうした教授の指導を受ける際の面白さかも知れません。