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今回は、Stern内で有名なDavid Yermack教授のRestructuring Firms and Industries(Class Resume) の授業に触れてみたい。講座名からはどんな授業か想像しづらいのだが、要は資本市場の構造や会社の(資本)構造に関するトピック(たとえばコーポレートガバナンス、M&A、Downsizing & Deconglomeration、PE)について幅広く扱うというもの。テキストは一応あるのだが、主に授業で使われる教材は新聞記事。
軽妙な語り口で、次々と辛らつな意見を述べる教授の授業は聞いていて飽きることがない。特に今学期は大きな案件のニュースが次から次に出てきており(教授曰く、こんなに紹介する記事の多い学期は始めて、とのこと)、アメリカ国内のみならず国境を越えて起こっている、金融を利用した企業・産業再編の激しい動きが本当によく見て取れる。
この授業の面白いのは、経営者や投資家といった人物に焦点を当てながらケースを紹介していくところ。よく人の顔がスライドになって出ており、次々と個性的な経営者・投資家が紹介される。例えば、学期初め(2月の頭)にFree Cash Flow Theoryを扱う中で、95年のKirk Kerkorianと言う人とChryslerのケース(このときは会社が投資する宛てのないCash Flowを持ちすぎているのではないか、というもの)が紹介されたが、つい先週、授業の最初10分くらいを使って行なわれる「最近の動き」の中で、同じ人(現在90歳!)がChryslerの買い手として名乗りをあげているというニュースが紹介された。説明を聞いていると、それぞれの案件を理解する上で、プレーヤーやその人間関係を知っておくのがいかに大事か、というのがよくわかる。
ちなみに、この授業はこれまで学んだことの総まとめという性格を持っており、教授自身は最後の学期に取ることを推奨している。このようなカリキュラムの組み立てのおかげで、それまでに取った「コーポレートファイナンス」や「投資銀行論[PDFファイル]」の授業に対する復習ができ、理解がより深まった気がする。たとえばプレーヤーが同じでも扱う業務によって見方が違うこと(たとえば「投資銀行論」。投資銀行の立場に立っていろんなトピックを扱う)、トピックが同じでも別のプレーヤーからの視点で見れば全然違うこと(たとえば「金融機関の財務分析[Wordファイル]」。一口に金利リスク、といっても金融機関ごとに影響や分析の仕方が全然違う。)はよくあるが、授業の種類が多いおかげで、いろんな角度からの理解ができるようになっている。こういう点がSternのFinance面での強みなのかな、と思う。
(Class of 2007 M.H)