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青山 敏さんに聞く
stern2001-10-12 (7616)

株式会社コムスン取締役

今回は介護サービス会社コムスン取締役の青山敏氏(1999年卒業)。
コムスンは、ジュリアナ・ベルファーレなどのディスコを成功させた折口雅博・グッドウィルグループ会長がCEOを務める介護サービス最大手の会社である。コムスンは2000年4月の介護保険法施行の機をとらえて一気に全国展開を行い、拠点数は最大1200ヶ所にのぼった。しかし、実際は計画を大きく下回り、一時は月に35億円の赤字を出すまでの危機に陥った。この危機に対し、2ヶ月後の2000年6月には早くも組織改革を断行し、その後1年で200ヶ所の拠点を廃止、700ヶ所を統合し、事業所を300ヶ所にまで絞り込んだ。こうした効率化の一方で、1年の間に売上を4倍に伸ばし、2001年4月には単月度で黒字を達成した。
青山氏は1999年5月にスターンスクールを卒業後、7月にコムスンに入社。全国展開計画の作成・実施から、その後の900ヶ所にのぼる拠点統廃合などの組織改革に直接携わってこられた。今回は、2001年9月22日に行われた講演(Club2010)の内容をまとめたものであり、テーマは自らの2年間の体験から感得した「ベンチャービジネス成功の5か条」。
その5カ条は次の5つである。

1:弛まぬベンチャースピリット
2:仮説ベース戦略
3:朝令暮改のススメ
4:ビジョナリーリーダー
5:ワンメッセージ主義


みなさんこんばんは。コムスンの取締役をしている青山といいます。今日はベンチャービジネス成功の5カ条ということで、簡単に資料をまとめてきました。ここ2年間、コムスンでいろいろな体験をしてきて、ベンチャービジネスの成功の秘訣がなんとなくわかった気がしています。ただ、コムスンのような在宅介護サービス会社は人に多くを依存しますから、これが普遍性のあるものなのかはまだわかりません。みなさんの会社と照らし合わせながら、参考にしていただければ、と思っています。

在宅介護サービス市場とコムスン
コムスンはご存知のとおり、在宅介護サービスの会社です。2000年4月の介護保険導入で、介護サービス市場は一気に市場が拡大しました。とはいえ、この分野はいろいろな意味で非常にチャレンジングな分野です。まず、介護保険自体が、世界のどこもうまくいっていません。ドイツも同様の制度がありましたが、介護サービス会社が赤字で質が低下していき失敗しました。日本での介護保険がうまくいくかどうかは、世界的にも注目されている実験なんです。また、介護サービス業は労働集約産業で、3K産業です。サービスの質のコントロールも難しく、ヘルパーのなり手を見つけるのも大変です。さらに、保険導入直後は公的セクターである社会福祉協議会が強い力を持っていました。社会福祉協議会は、自治体からの助成金と自治体との太いパイプというアドバンテージを持っていますが、昨今の構造改革で税金をベースとした非効率な運営ができなくなってきているので、影響力が弱くなってきています。この在宅介護市場に対して、コムスンは「高齢者の尊厳と自立を守るために」という経営理念を掲げて、1200ヶ所の全国展開を行い、一気にシェアをとる作戦にでました。しかし、実態は、予想以上に状況は厳しいものでした。どこの自治体も事業所の誘致はしたけれども、お客は社会福祉協議会などの公的セクターに囲いこんで、民間には渡さなかったんです。

新市場の不確実生、大胆な組織改革、そして黒字化
新市場特有の不確実性から、当初の計画から大きく下方修正となり、抜本的対応を断行しました。介護保険法施行からわずか2ヶ月でしたが、組織改革を断行して人員の削減に踏み切りました。これは、マスコミからさんざんバッシングされましたが、実際には99%の人が手を挙げて辞めていったというのが実情です。2ヶ月しか働いていない人がほとんでしたが、退職者には3ヶ月の退職金を払っています。これも、「資金があるうちに」と、退職プランの作成をすぐに行ったからできたことです。最悪の場合を考えて十分な資金を株式で調達しておいたことがここで効きました。また、拠点統合といっても、決して縮小均衡ではなく、売上拡大しながら効率化していきました。拠点数は4分の1になりましたが、顧客数は倍、売上は4倍にまで拡大しています。
この1年は正直言って大変でした。しかし、社員・パートの人も含めて、「高齢者の尊厳と自立を守る」という社会的意義を感じながら、“聖戦”という意識で戦ってきました。それも、コムスンという会社だけではなく、「われわれが倒れたら、介護保険制度自体がだめになる」という意気込みだったからです。これを可能にしたのが、やはりなんといっても折口会長でした。折口会長は、全国を回っての現場の一人一人と会い、会社の現状・展望を説明しながら、「正義は必ず勝つ」と訴えつづけました。労働組合結成をはじめ、いろいろなことがありましたが、1年で黒字化を達成することができました。これは1年前から考えると、まるで奇跡だといえます。なぜ、コムスンが奇跡を可能にできたのか? これを成功の5カ条として、5つにまとめてみました。

1:弛まぬベンチャースピリット
折口会長を見てきて、一番強く学んだのは、その「メチャクチャ強い意志」。これはとても重要で、ビジネスにおいて絶対にへこたれないことはとても大事だと強く感じました。折口さんは裕福な家庭の生まれですが、貧乏のどん底に突き落とされたという経験の持ち主です。また、自衛隊の士官学校に入り、厳しい生活を経験しています。そんな経歴からか、何回失敗しても這い上がってきています。ジュリアナ、ベルファーレ、そしてグッドウィルと、とにかく打たれ強いです。自分もテレビのニュースステーションでバッシングされましたし、役員はみんなバッシングにへこたれていましたが、折口会長だけはへこたれていませんでした。たとえ、バッシングの記事であっても「出ることはいいことだ」とバッシングそのものは全く気にしていませんでしたね。
その強さの源はやはり、「高齢者の尊厳と自立を守る」という経営理念だと思います。われわれは正しいことを行っている、必ず勝つ、という信念ですね。コムスンではこの経営理念を非常に大事しています。毎朝唱和するだけでなく、会議の冒頭にも唱和して、無意識のレベルにまでこの経営理念を共有化するようにしています。このように経営者と社員が一つの経営理念を共有化することは、強いカルチャーを生むことに必要不可欠です。加えて、自分は背水の陣の必要性を強く感じました。というのも、私はかなりの借金をして、コムスンの株を買っていたんです。これは折口会長に強く勧められたからなんですが、今振り返ってみると、これがあったからがんばれたと思いますし、追い込まれて正解だったというのが実感です。
「弛まぬベンチャースピリット」というのはグッドウィルグループの社是でもあるんですがベンチャービジネスにとって、もっとも重要ですし、経営理念の共有、経営者の強い意志、そして経営陣の背水の陣の3つがそろって初めて実現できるものだと思います。

2:仮説ベース戦略
次に、「とりあえずやってみよう」という仮説ベースの戦略が大事です。自分はリサーチが専門だったので、当初はリサーチに突っ込んでいましたが、これを突き詰めると金と時間もかかります。また、リサーチをしてもあまり結果が出なかった、というのが現実です。日々の状況は変化するので、ヒアリングして変化をつかみながら、それに対応していくことが必要なんです。そこで、重要なのは「柔軟にどれだけ変えられるか」です。この“変化対応能力”が何よりも重要になります。迷わず、単純明快に、というのが重要です。
これは事業所のマネジメントについてもあてはまります。事業所でも、考えているところは失敗しています。そもそもコムスンは普通ではできないことをやろうとしているので、理論的に考えると「できない」という結論になるんです。ところが、あまり考えずに、次々と手を打って行動しているところは成功しています。新しいビジネスには不確実性は永遠に付きまといます。リサーチしている間に状況が変わっていきます。それよりも、仮説を立て、対象者にヒヤリングし、60%正しければGOサインを出すというくらいでいいと思います。重要なのは間違ったときのシナリオを用意しておくことです。最初の拠点展開から大胆な統合に踏み切ったのも、最悪のケースを考えて後戻りできる手元資金を潤沢に持ち、これができるマネジメント力のある経営陣をグッドウィルから参加させることで柔軟に方向転換できました。

3:朝令暮改のススメ
「朝令暮改」というと、ネガティブな印象をもたれる方も多いと思いますが、コムスンでは、「朝令暮改はいいことだ!」という雰囲気もあるほど、浸透しています。言葉を変えれば、それだけスピードと柔軟性がある組織になっているということです。コムスンはベンチャー企業といっても、社員が1500人、登録社員が5000名にものぼる大組織です。この組織をスピードと柔軟性がある組織にするために、当初から意図的に朝令暮改にしてきました。不確実なビジネスでは、急な方向転換が必要ですし、組織が急な方針転換に慣れていないといざというときに動きません。
といっても、なんでも変えるわけではありません。コムスンでは、目的と手段をしっかりと区別 をしています。「高齢者の尊厳と自立を守る」という経営理念をはじめ目的は変わりませんが、手段は変わるということです。
さらに柔軟性ということでいえば、「理不尽なマネジメント」という言葉も社内でよく使われています。常識とか、論理的に考えたらおかしいということもあえて行うんです。例えば、ある事業所が人が足りなくて忙しいにもかかわらず、人を採らないでお客さんを押し込んでいくといったこともあります。この中で意識が変わり、実は人を使い切れていないことに気づくんです。今、事業所のマネジャーとして望まれているのは「優秀な管理者」ではなく「仕事のできない人」。しかも、「子供っぽくイケイケの人」です。こんなのも、常識や論理にとらわれていたらでてきませんね。きれいな言葉でいえば、「アンフレームワーク」ということでしょう。最近では、「1日に1つの奇跡を起こせ」という言葉まで出てきているほどです。

4:ビジョナリーリーダー
リーダーは、会社のビジョン(あるべき姿)を明確かつ平易な言葉で語れる能力が必要です。ビジネススクールでは、プレゼンテーションが一つの科目としてあるほどですが、日本はまだまだ遅れています。今は、会議の場で3分間のスピーチを行わせたりして、経営幹部を訓練しているところです。そして、リーダーに必要なのは、現場の従業員とダイレクトに対話することです。昨年、900ヶ所の事業所を統廃合したときも、折口会長自らが現場の一人一人に会って、直接話をしました。日産のゴーン社長も従業員との対話を積極的に行いましたが、リーダーの最も重要な仕事だと思います。リーダーはそのなかで、社員に夢と希望と勇気を与えられる人でなければなりません。いくら優秀なマネジャーであってもこれができるかどうかわかりません。もちろん、ビジョンを具現化するために、策を考え、これを落とし込んでいくマネジャーは必要です。でも、リーダーとマネジャーは違う。このことは重要なポイントです。

5:ワンメッセージ主義          
自分は入社当初、よく上司から「課題が絞りきれていない」「メールが長くて伝わらない」といわれました。「まずは一つに絞ってやれ」「レベルは小学生にでもわかる程度」といわれるんですが、これが難しいんです。社内ではこのことを「子供のおつかい」という比喩を使って強調されています。例えば、売上を増やすのに様々打ち手がありますが、全てを詳細に検討して、組織が実行できるメッセージ、例えば、「週3回、お客さんのところに行きましょう」というように指示を出すのです。
今、私は関東事業部の責任者で多くの事業所をみていますが、つくづく、「大きな組織は2つのことを同時にできない」ことを感じています。メッセージは必ず一言にまとめるのが重要です。それも、その一言は、多角的に分析し、複数の解決案を検証した結果でなければ意味がありません。コムスンには、「1センテンス2行/トータル20行まで」という文章作成上のルールがあるのですが、その一言を凝縮された2行の対策を打ち出せるのがプロなのです。
「エレベータートーク」という言葉はご存知だと思いますが、これができない人材は、上級ポジションに上げません。先ほど、経営幹部にプレゼンテーションの練習をさせていることをいいましたが、そのプレゼンテーションも「ワンメッセージ主義」が基本です。

今後の課題  −楽しさ、パートの戦力化、サービスの質向上−
今は、“楽しくする”ことが最大の課題です。組織改革時代は財務中心でしたが、黒字化を達成した今は“楽しく”働くにはどうすればいいかを真剣に議論しています。今のところ、徹底した情報開示、インセンティブ、キャリアアップ研修などを行ってきています。。そして、目標はパートの人をマネジャーにすること。コムスンでは、毎週毎週、PL(損益計算書)が事業所ごとに出る仕組みを作ってあるんですが、パートの方でもすでにPLがわかって意識している人が出てきています。今は、役員がパートの人に直接会って、モチベーションを上げているところです。
サービスという点で考えると、これからはますます質が重要になってくるとおもいます。お客さんの目が肥え始めているんですね。コムスンでは接客マナーだけでなく、今は明るさや雰囲気に気を配っています。お客様から「コムスンの人がくると元気になる」といわれることをめざしています。

拡大ステージへ −2003年6月の東証一部上場が次の目標−     
市場自体は確実に大きくなっています。年に4―5%の割合で高齢者は増えてきますし、単価も上がってきます。また、構造改革で助成金を減らす動きが出てきており、公的セクターの撤退の動きも出ている。ヘルパー供給がネックでしたが、これも世間のリストラ効果でここ1ヶ月でヘルパー応募が増えて3倍にもなっている。これを使って、拡大ステージに入りたいと考えています。
この1年は大変苦しかったですが、早めにリストラできたことで一人勝ちの様相を呈してきています。最大手のニチイ学館はまだ月8億円程度の赤字を出しているといわれていますし、3番手以降も赤字が多く、M&Aの話はかなり出てきています。介護サービスの会社は1万2000社ほどありますが、ほとんどが零細企業です。この業態は間接費があるとすぐに赤字になるので、中堅どころがもっとも苦しい状況になっています。耐え切れず、こぼれてくる会社を生き残ったところが拾っていくという構図になってくると思います。
黒字化が達成できた今は、2003年6月の数字をベースに東証一部上場が次の目標です。


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