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4. 矢谷 俊輔(2004年5月卒業予定、東京三菱銀行より派遣)
ここ10年でランキングを飛躍的に上昇させ、トップスクールとして、また有力ファイナンススクールとしての地歩を確実に築いてきたわがStern Schoolですが、現DeanのT. Cooleyの就任後、その研究・教育内容の一段の向上を目指して様々な改革が行われています。今回は、Sternの最近の変貌ぶりについてレポートしたいと思います。
まず、現在力が注がれているのが、教授陣の一層の充実。これまでSternの教授といえばValuationの大家A. DamodaranやBankruptcyの大御所E. Altmanに代表されるFinance Departmentだけが有名でしたが、それ以外の分野の強化にも力が注がれています。例えばMarketingのR. Winerは、前U.C. BerkeleyのMarketing DepartmentのHeadで彼の執筆した教科書が広く米国のビジネススクールで使用されている人物ですが(日本ではP. Kotlerだけが有名ですが・・・)、現在はSternのDeputy DeanとしてMarketing Departmentの抜本的再構築に取り組んでいます。また、Managementではゲーム理論のグルであり、有名なモCo-opetitionモの著者であるA. Brandenburgerが昨年より教鞭をとっていますし、EconomicsにはFinancial Historyの第一人者N. Fergusonが同じく昨年より招聘されました(残念ながら彼は2004年春学期限りでハーバードビジネススクールに移籍してしまうそうですが)。
これら教授陣の充実に加え、教育・研究内容の向上という点で今年最大のトピックは、やはりFinance DepartmentのR. Engleのノーベル経済学賞受賞だと思われます。NYUに教授として在籍した人がその在職中にノーベル賞を受賞するのは始めてのことだそうで、 Sternのみならず大学全体としても大変な名誉です。また、一部の学校に見られるような、「ランキングを上げるためだけにあらゆることをする」態度を廃し、提供する教育の内容をもって世の中の評価を仰ごうとする現Deanの考え方が報われつつあるとも言えるでしょう。
その他に大きな変化といえば、Majorシステムが基本的に廃止され、代わってSpecializationという仕組みが導入されたことです。これは、 MBA学生全員を一律にモGeneral Management Majorモとする一方で、希望者には最大3つまでのSpecializationを許容するというものです。Specializationに必用な単位数は Majorよりも少なくなっており、一定の分野コンセントレーションを維持しながら幅広く経営全般について勉強したい学生の希望に添えるようになっていること、また従来のFinance、Marketingといった区分けだけでなく、Corporate Finance、Bankingといったよりきめ細かい区分やProduct Management、Leadership &Change Management &といった分野横断的なspecializationも用意されていることが特徴的です。この改革は他トップスクールの動向を睨みながら、優秀な学生を引きつけ続けることを可能にするための方策として導入されており、今後の成果が楽しみなところです。
これら以外に、Entertainment, Media & Technology programsやStern Consulting Corps.といった、ニューヨークというロケーションならではのプログラムについてご紹介するスペースがないのが残念ですが、以上見てきましたように、 Stern Schoolは今後の更なる発展を目指して日々変化を続けています。卒業生の皆様からも、今後もますますのご支援をいただければ幸いですし、また日本における卒業生ネットワークの強化という点で、在校生としてお手伝いできることがあれば積極的に協力したいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。