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【寄稿】マーケットは語る(三駄寛之の独り言) 5.雇用システムと人材の流動化
stern2001-01-07 (3183)

三駄寛之
大和証券SBキャピタルマーケッツ(株)
金融商品開発部
セールスエンジニアリング課
次長

金融市場は市場参加者の将来への見通し、期待が反映されますから、世の中の新たな流れを先取りしていろいろな動きが起こります。
過去10年間、日本の金融市場はバブル崩壊の負の遺産をしょって低迷を続けてきましたが、ここにきて新たな胎動を感じさせる動きも出てきております。金融市場に携わる者として、金融市場や私の回りで起きている出来事からそんな日本の社会、経済や企業経営への新しい動きを紹介できたらと思っています。

雇用システムと人材の流動化

最近、日経新聞の日曜日の求人欄を見るとやたらに求人広告が多い。
ファンドマネージャー、セールス、コンサルタント、バックオフィス業務、マーケティングなど多岐にわたるが、いろいろ条件を見ていくと結構狭き門になっている。
 ・ MBA、CPAなどの資格保有者優遇、う〜ん、一応MBAは持っている。
 ・ 実務経験3年以上、でもこの仕事はやったことないしな・・・
 ・ 35歳程度まで・・・・やばい35歳程度まで35歳を超えたらだめかな??

私自身は転職どうこうとは考えていないが、私と同世代の人たちが毎週、日経新聞の求人欄を見ながら、自分の将来について考え込んでいる姿を想像してしまう。

ところで、これだけの求人広告をみると、やはり条件は結構高いとはいえ、それなりの能力を持った人に対する企業の需要は相当に高い。この理由は、これまでの重厚長大の装置産業中心の製造業から21世紀型のITを中心とした産業の構造変換のなかで、企業としての競争力の鍵はいかに付加価値を創生できる優秀な人材を集めるかということにこれまで以上に依拠しているからに他ならない。また、企業が如何なる資産をもっていようが、それから将来の価値を生み出していくのは人である。

雇用の需給ギャップは、企業の求める人材が高度な専門知識、能力を持った即戦力、すなわちプロフェッショナルに対する需要に対し、このような人材は非常に少ないことから起きる。私のいる会社でも、外資系の金融機関のように年俸制で外部から専門的な能力を持つ人材を募っているが、是非採用したいと思える人はごく一部である。現状の部門にとって必要能力を持つ人材か、チームの人間と同じ価値観を共有できるか、任せられた職務においてリーダーシップを発揮できるか、等、その人が入ってきたことをイメージしながら、採るべきか否か判断するが、イメージに合う人は数少ない。

しかし、この雇用システムによれば、少なくとも人事部が主体となって人材を採用し各部署に振り分けるといった旧来型の方法とは違い、ほしい人材を独自に探し、雇用条件についても各部署のトップの判断でほぼ決定するため、適性のない人をとるリスクは非常に少ない。雇用者側からいえば、このように現場レベルで適正があり、採用したいと判断した人を採用することができること、与えられた職務を果たせない場合には契約を更新しないことができるといったメリットがある。また、雇用される側からすれば、自分がどの業務を、どの立場で行ない、どれくらいの報酬を得ることができるのかについて入社する前にわかり、人事異動で他の業務に就くことがなく、自分のプロフェッショナルとしての能力を向上させていくことができることができる。反面、終身雇用が保障されていないため、期待されている仕事ができない場合には首になるリスクは付きまとう。

私自身はこのような雇用システムの最大のメリットは、企業と社員との間に馴れ合いをなくし、適当な緊張感が生まれることでより高いレベルのビジネスを行なう環境を創れることであると思う。優秀な人材ほど企業が適切な職場環境、待遇を与えないと会社を離れていく。また、社員は成果をあげなければ首になるという緊張感を持ちながら、社内の軋轢を恐れずビジネスとして成功するためにはどうしたらよいかを真剣に考える。つまり、会社から給料を貰って雇われているという意識ではなく、独立した個人として高い専門能力を提供する対価として報酬を受け取るという対等な関係を構築することである。

このようなシステムが万能とは思わないが、人材の流動化が進んでいるなかで、同様のシステムを既に持っている外資系の企業と伍して競争しようと考えるのであれば避けては通れない道ではなかろうか。年功序列+実績に応じた多少のボーナス格差だけでは本当に企業が必要としている人材を獲得するのは難しい。


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