NYU STERN JAPAN ALUMNI OFFICIAL SITE
| ホーム | サイトマップ |

NYU STERN JAPAN ALUMNI OFFICIAL SITE

MEMBERS ONLY
ユーザー名:
パスワード:
  • Home
  • About US
  • News & Events
  • Interview
  • Columns
  • Blog
  • FAQ
  • Links
  • Membership Services
  • On-Line Directory
  • BBS

Columns

ホーム > Columns > 詳細

金のアカデミズムの現場から 第四回 「プロフェッショナルとスペシャリスト」
stern2000-09-12 (3287)

金 雅美(キム アミ)
明治大学博士課程95年入学 現在:博士論文執筆中&明治大学経営学部非常勤講師

第四回 「プロフェッショナルとスペシャリスト」


70年代から60年代には、高度な専門能力の処遇、育成や組織運営の柔軟化のために専門職制度に関する企業の関心が高まり、社員全員の専門職化、専門職の設置などが進められた。しかし日本で最初に専門職を導入した三菱電機が81年に専門職制度を廃止したことをきっかけに、その課題が表面化してきたのである。すなわち専門能力保持者の処遇、育成を目的としてはいるが、実際には専門能力保持者が少なかったり、職務内容の不明確化、業務評価が困難であったことなどである。さらに全社的な専門能力の向上を目的にするものの、育成の難しさが多くの企業で指摘されている。

このような背景の中で、管理職、または同等以上の処遇である取締役と同等な資格、給与、研究のための自由裁量の拡大を試みる企業もではじめ、多くの企業で「スペシャリスト」というコンセプトが使用されるようになった。

一方、このような「スペシャリスト」から「プロフェッショナル」というコンセプトへの移行がはじまったのは、90年代のバブル経済崩壊以降である。90年代にはいり、世界的なIT革命や成果主義のトレンドとともに、それまでの「スペシャリスト」という専門知識を極めて重視する人材像を大きく変えていったのである。

すなわち、「プロフェッショナル・リーダー」と呼ばれる、専門性を成果に直接結びつけることを可能にし、専門以外の分野や経営管理能力にも精通しており、人間関係にも優れている人材への企業の要請が高まったのである。「プロフェッショナル」の言葉の意味は、高い専門性はもちろんのこと、メンバーのモチベーションを高める媒介役のリーダーに他ならない。

ところで、「プロフェッショナル」と「スペシャリスト」のコンセプトの相違は、およそ次のような3点に要約できよう。

第1に、成果に重点を置くかどうかという点である。プロフェッショナルはある特定分野における高度な専門技術・能力を成果に直接むすびつけることが期待される。そのような成果を出すためには、高い仕事意欲やビジョン、洞察力なども持ち合わせていなければならない。一方、スペシャリストの場合、彼らの専門性は特定分野の研究など短期間における成果の発揮が認識しにくいのが特徴である。すなわち、研究や技術開発など、個人の専門性自体が高く評価されるためである。

第2に、プロフェッショナルとは、ただ一つの分野における専門知識だけでなく、他分野や同業他社など広範囲における情報にも精通している必要性が高い。1つの分野における専門性が極めて高いスペシャリストと比較して、プロフェッショナルの場合、より大きなビジョンから決断を下し、同時に、その決断に関する情報に精通している必要、すなわち経営管理能力を取得している必要性が高い。

第3に、プロフェッショナルの場合、ヒューマン・スキル、すなわち人間関係に精通していることがリーダーとしての条件となる。確固たるビジョンを持ち、メンバーの能力を見極めつつ、目標を達成するためのチームワークを上手にリードしていく必要性が高い。成果をあげるために、自身の専門性に頼るばかりではなく、メンバーの能力を上手に活用して相乗効果をもたらす必要性が高い。

以上のようなプロフェッショナルの中でも、その得意とする専門分野により、起業プロフェッショナル、営業プロフェッショナル、ITプロフェッショナルなど、そのコンセプトは細分化の傾向にある。前述した3点のスキルの取得はもちろんのこと、特定分野における高い専門知識と経営管理能力への企業からの要請は高まるばかりである。

 そのようなプロフェッショナルの中でも、90年代における日本のグローバル競争の激化は、グローバルな環境で活躍できるグローバル・マネジャーというコンセプトへの企業の注目を集めた。グローバル・マネジャーとは、通常、グローバルな環境で成果を導き出していくためのマインドセット(構図、バランス、プロセス、機会、多様性、グローバル)、個人的特性(知識、分析力、戦略性、柔軟性、感受性、解放性)、マネジメント能力(競争力、複雑性、整合性、変革、チーム、学習)などを持ち合わせた人材である。

続いて90年代後半になると、グローバル・マネジャーの中でも、特に、世界の拠点の経営者、トップリーダー、候補者であるグローバル・リーダーの育成が課題となってきた。国内における基幹人材の育成の課題と同様、グローバルな環境における基幹人材、すなわちグローバル・リーダーの育成へとその焦点が変化してきたのである。

以上のような、70年代から80年代におけるスペシャリスト、90年代におけるプロフェッショナル、さらにプロフェッショナルの中でもグローバルな環境におけるプロフェッショナルであるグローバル・マネジャー、90年代後半におけるグローバル・リーダーと、そのコンセプトの焦点は時代とともに変化してきている(図表を参照)。

このようなコンセプトの変化を企業が重視する背景には、その時代が必要とする人材の育成方法に影響してくるからである。必要とされる人材の育成方法も、時代とともに、改革・調整・開発される必要性が高い。

例えば、90年代のグローバル・マネジャーやグローバル・リーダーの育成方法に関しては、海外のビジネス・スクールへの派遣による育成方法が企業の注目を浴びている。特に、海外拠点をマネージするグローバル・グループ・リーダーの育成に関しては、短期における海外研修や海外トレーニー制度、またはコーポレート・ユニバーシティーにおけるグローバルな分野での能力開発では限界があるとの企業の認識が高まったからである。

本格的なビジネス・トレーニングの必要や高度なレベルの英語力、さらには国際的な人的ネットワークを取得する必要が高いため、海外のビジネス・スクールへの派遣によるグローバル・リーダーの育成が、90年代後半から企業によって再認識されてきている。90年代にはいってから海外のビジネス・スクールへの派遣を開始した企業も多い。

国内のビジネス・スクールへの派遣は、海外への派遣と比較して派遣コストが安く安全面も高いが、その中心は国内向けの経営プロフェッショナルの育成にある。一方、海外向けの本格的なグローバル人材の育成方法の1つとしての海外のビジネス・スクールへの派遣は、派遣コストや帰国後の処遇、さらには派遣後の退職の課題なども同時に抱えている。しかし実際には、海外のビジネス・スクールへの派遣を行っている多くの企業が、帰国後のMBAの企業内における活躍を高く評価している。


copyright(c) 2008 sternjapan. All Rights Reserved.